途上国は、オートメーション化が雇用に与える影響を恐れるべきか?

金曜日 , 26, 1月 2018 途上国は、オートメーション化が雇用に与える影響を恐れるべきか? はコメントを受け付けていません
技術の発達に伴う失業の懸念が、先進国、途上国に関わらずメディアの見出しや政策談話のトピックになっています。 2017年に経済学者のカール・フライとマイケル・オズボーンは、米国の雇用の47%にオートメーション化によるリスクがあると結論づけました。様々な報告で同様の主張がなされており、2016年の世界開発報告では、インドの雇用の68.9%が危険にさらされていると主張しており、それは技術導入が遅れる場合でも42.6%と見込んでいます。世界はロボット工学や人工知能によるオートメーション化の脅威に直面しているのでしょうか? 国際ロボット連盟によると、確かにロボットの普及は進んでいますが、主に先進国の産業に集中しており、これに中国も加わります。2016年に販売された294,312台の産業用ロボットのうち、74%が中国、韓国、日本、米国、ドイツの5カ国に供給されました。中国では87,000台であったのに対し、インドでは2,627台でした。インドでは、自動車産業でロボットが普及していますが、衣料分野などの労働集約型の製造業ではそれほど浸透していません。 実際に一部の国ではロボットが台頭していますが、フレイ氏とオズボーン氏の結論は、特定の産業での裏付けを参考にしている点で注意して解釈する必要があります。彼らの研究は、オートメーション化を制限する可能性のある相対コストなどの実際の経済的要因などが十分に考慮されたものではありません。仕事のオートメーション化が可能だと結論付けても、それが短期間になしうるのか、もしくは長期を要するかは言及されていません。 オートメーション化による技術革新は、産業革命の黎明期よりも早いスピードでグローバルに広がっていますが、実際には様々な制約の影響も受けています。途上国には、先端技術から遠く離れており、信用の不足や情報へのアクセスなどの制約もあるため、新技術にアクセスすることはできない中小企業があります。2014年に世界銀行が実施した企業調査によると、従業員が5~19人のインドの企業のうち、外国の技術供与を受けているのは3.8%であったのに対し、従業員が100人以上いる企業では20.5パーセントでした。 政策決定者は、技術革新による雇用への影響を懸念する必要はありますが、それは雇用の量的変化に対してではなく、質的な変化を考慮すべきであり、歴史的には、技術革新は労働者から仕事を奪う一方で、新たな仕事を得ている人もいます。つまり、過去の技術進歩の波により雇用が失われることがあっても、これを補償する雇用が他の経済分野で創出されてきたのです。例えば、自動車は馬車の運転手の仕事を奪いましたが、一方で、自動車技術者やモーテルなどの他のビジネスが登場し、新たな仕事が失業者の引き受け先となりました。 近年のオートメーション化の動きは、米国と欧州で労働市場の分極化をもたらしたように思われます。弁護士などの認知能力を必要とする高度に熟練した非定型的な職業だけでなく、食品サービス業などの高度な技能を必要としないがオートメーション化しにくい職業の雇用が増えており、賃金が急速に高まっています。一方で、機械オペレーターや事務職など、オートメーション化が可能になっている中程度の技能を要する職業の雇用は減少しています。 しかし、技術革新に起因する仕事の分極化が普遍的な現象であると結論付けるには、開発途上国から十分な根拠が得られていません。ロボットにとって代わられる雇用の変化を傍観すべきではありませんが、開発途上国のおけるロボットの導入による雇用への質的影響をしっかりと監視していく必要があります。途上国におけるオートメーション化の将来は、米国などの先進国の動向と同じように進捗するとは考えにくいと思います。 途上国では、ほとんどの人が失業した状態を長期間維持することができません。そのため、失業率を上げることよりも、雇用の質を向上させることが大きな課題なのです。技術がさらに進歩するにつれて、高度に熟練した人の所得が増えていきます。このため、教育効果の向上と技能開発システムの継続的な需要を維持することが重要な優先課題となるのです。そして労働者は、新技術の代替とならないように補完的な技能を習得する必要があります。 つまり、オートメーション化によって雇用が失われるという最悪の予言を信じて混乱する風潮に抵抗する必要があるのです。小規模企業は技術へのアクセスを可能にすることにより、生産性と競争力を向上させると共に、職場の労働安全衛生を向上させる必要があります。開発途上国の政策立案者は、技術は単なる側面に過ぎないことを忘れないようにして、技術革新を恐れず、成長と雇用創出を促進する様々な要素を追求し続けなければなりません。 著者:Sher Singh Verick氏は、オーストラリア国立大学のクローフォード公共政策学校のオーストラリア南アジア研究センターの客員研究員です。また、国際労働機関の南アジア向けのディーセント・ワーク(人間らしい仕事)・チームとインドのカントリー・オフィス の副部長を務めています。